死の迷路

フィリップ・K・ディック
「死の迷路」
Philip K.Dick
A maze of death

(1970)

これを書いたとき、
作者は相当な行き詰まりを感じていて、
これまでの創作パターンを壊すつもりで
書いたが、やっぱり、「偽の現実」オチの
パターンをやってしまい、どうしようもないね、
っと自己憐憫したらしい。

ほんでもって、1990年2月に
これを読んだのだが、当時の私も
人生いろいろで、
傍目にはたいしたことをしていないが、
落ち込んでいたので、
このストーリー展開での

閉塞感→閉塞感→閉塞感→現実展開
のオチが、妙に合点がいき、
作者のもがきが、わかるようで納得しました。

普通の推理小説のような犯人捜しが
延々続きます。

読後、プールで泳ぎ、「デルマクオーの世界のような
浮遊感~」などと、訳のわからん、泳ぎをしてましたっけ。

創元推理文庫の
山形浩生氏の解説もすばらしくて、
「ではなぜディックは流行ったのか」
の分析は「まさに、まさに!!」
でした。

(以下部分引用)
「ディックは陰気で無能な卑しい人間を描くにかけては素晴らしい才能を
もっている。・・・(略)・・・そうした落伍者が、
落ちこぼれているが
故に自分を落ちこぼした社会を覆う衰退を認識できる、
というアウトサイダー
の優越性をしょっちゅう描くからで、
もちろんそれを認識できる落伍者たちは
その歪みから自由で、間違っているのは世間で、
したがって自分は正しいというまったく根拠のない自己正当化を
読者に可能にさせてくれるためだ。
・・・(略)・・・
「落伍者は落伍者であるがゆえにエライ」という、
自堕落といえばこれほど自堕落なものもないテーゼを
恥ずかしげもなく、持ち出してきて、しかも呆れた
ことにそれを読者に納得させてしまったという一点に尽きている。
(引用終わり)



テーマ : SF小説
ジャンル : 小説・文学

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

フィリップ・K・ディック
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
Philip K.Dick
Do androids dream of electric sheep?
(1968)



どこから、書評を初めて良いやら
わからぬものだが、
差し当たり所有数の多い作家からか。

フィリップ・K・ディックは
ご多分に漏れず、映画『ブレードランナー』から知った。
ブレードランナーも坂本龍一氏や浅田彰氏が絶賛しているのを
雑誌で読んで、大学時代に、映画館まで見に行ったのだった。
映画を見た。感想、暴力オンパレードで、納得できず、だった。

ヴァンゲリスのエンドタイトルは格好良いと思ったが。
しかし、しばらく時間が経過し、あの硫酸の雨が降るロサンゼルスの
映像美が、他の映画や文学では、獲得しがたい情感を与えることに
気づくのだった。

むさぼるように再度、映画を見た。

そして、原作を読んでみようと思った。

読んだ。機械でなく本物の動物を飼うことにステータスを
感じるようになる設定に、強烈な違和感。

夫婦の感情齟齬、ハードボイルド・タッチの描写
ウィルパー・マーサー教、共感ボックス、
岩山をのぼり続ける老人、
その他、ガジェットの数々、
その癖、電話帳が出てくる場面あり。

何かわからんな~。

しかし、アンドロイドにせよ、人間にせよ、
思い通りにならない美女を描くのは旨いと思った。
ダメだめ感たっぷりの男キャラクターたち。

単身赴任して、一人寝る5月のマンションで、
やはり、まず最初に読みたくなったのが、
この本だった。

なんでだろう?絶望の中の希望を描き、また、
解決のないエンディングに、現実感を感じるからか。

今では自分のバイブルのように感じ、
何度も読めてしまう物語だ。

初読1985.7.15
2回目1986.5.20
3回目2002.5.19
英語では2007.6.20

テーマ : SF小説
ジャンル : 小説・文学

玄関ドアのペンキ塗りしました!3部作完了!

玄関ドアのペンキを塗りました。

6月に中古の家を買ったのですが、

玄関ドアの下半分が日焼けしてまして、

そのリペアです。

近親者からは「ドアを付け替えろ!」と言われ続けるも

業者さんから見積もりもいただいたのですが、

現状の木目のぬくもりある高級ドアに

ミョーに愛着を感じてしまい、

(アルミの高級ドアは日焼けしないが、やはり、暖かみが違うらしい)

入居して5ヶ月でやっと塗り納めです。


ネットで探しても、玄関ドアペンキ塗りの、意外と参考になるホームページは

ありませんでした。

美しく塗っていらっしゃるのは

こちらのホームページ
http://blogs.yahoo.co.jp/madameako/30881780.html

ホームセンターで

1)油性ペイントと、

2)筆あらい液と、

3ハケ2種

4)マスキングテープを

買ってレッツ・トライ!

玄関を正面から見たすがたです!
玄関ドアペンキ1

ドア部と、格子部の上半分は塗り済みなので、
今回はこの格子部の下半分です!
ペンキ2

ペンキが垂れても、タイル床部分が大丈夫なように
新聞をひきました!
ペンキ3

悩むこと40分で
2ヶ月前に買ったペンキと
筆あらい液です!

ペンキ:カンペパピオ「一回塗り鉄にも木にも速乾」こげ茶色0.5L
ペイントうすめ液:カンペパピオ「カンペペイントうすめ液」250ml

ペンキ4


油性ペンキ用ハケ
太いのと細いのを買いましたが、
この写真の細いものだけで十分でした。
(太いものを使うとペンキが垂れてしまって、始末が大変
に思えましたので、使用せず)

ペンキ5

このようにDVD-Rのパック容器を
ペンキ缶入れにして、これを左手に持ち、
右手にはハケを持ってヌリヌリしました!
ペンキ6

塗りの出来映えはこちら
DSC01421.jpg

不動産投資で資産倍々!会社バイバイ♪

吉川英一 先生 著
『不動産投資で資産倍々!会社バイバイ♪』
(2006年)


を再読しました。

吉川先生のサラリーマン時代の苦労話が
身につまされる内容で、
その逆境から、こその逆転劇というか、
リタイア目指しての苦闘、
日本版金持ち父さんを地方で実現する行動力に
敬意を表する次第です。

確かに、2005年、2006年の当時と、
不動産投資の状況は変わってきていますが、
軸の話は変わっていないような気がします。

テーマ : 資産運用
ジャンル : 株式・投資・マネー

『信用・デイトレも必要なし 低位株で株倍々』

吉川英一 先生 著
『信用・デイトレも必要なし 低位株で株倍々
-現物・逆張りで億万長者になった私の投資法』

(2006年)


を再読しました。

あこがれの吉川先生の株の本、
低位株の魅力について、経験に踏まえてご説明されている。

早く知っていれば!の思い強し!
素人の飛びつき買いからの卒業ができます、この本で。



テーマ : 株式
ジャンル : 株式・投資・マネー

『普通のサラリーマンでも15年で2億円作れる!』を買いました!

四谷 一 著
『普通のサラリーマンでも15年で2億円作れる!』
(2005年)
を買いました!

著者は若くして、激務サラリーマンのかたわら、
8年間、年率平均26%を達成したとのこと。

印象に残った文は
・健康管理こそ最大の資産運用だ!
・「投資の基準」を知れば失敗しない!
・プロと同じ土俵で戦わない

また、問題企業を排除するための指標をわかりやすく解説しています。

四谷さんのホームページはこちら
更新が・・・・



テーマ : 株式
ジャンル : 株式・投資・マネー

『ちくま文庫 ギリシア悲劇Ⅲ・Ⅳ エウリピデス』

『ちくま文庫 ギリシア悲劇 
エウリピデス』

エウリピデスについて

このお方については、何とも言えん感じ。他人に思えないようなところがある。
ホメーロスもそうだが、ホメーロスの表現者としての狂気とは違う、一つの狂気の極み。

一体、生身の人間が、神に、相見えることができるのであろうか?
自分は神の子だと言い切った男は磔になって死んだ。

演劇の神ディオニュソスそのものに悲劇作者が対決しようなどと、誰が考えつくであろうか。
神聖なる悲劇の舞台上でディオニュソス的精神を押し殺すことを試みるという
神及び神々への冒涜ともいえる挑戦をやったわけだ。

その悲劇作者の最後は複数の犬に身体を食いちぎられたという。磔にも似た死。
あな恐ろしや。さわらぬ神にたたりなし。

そしていつもの問い「神とは何か?」、その問いかえしの「人間とは何か?」。
民族・国家・集団の狂気に誰が正気を与えることが出来るのか。
市井の人々の純朴な信仰をくつがえすことの難しさ。
あなたがたのその信仰こそ、狂気なのだと宣言することは死を招く。

かつての東側諸国の崩壊でも実証された、ある意味でね。

ニーチェの公刊物の処女作『悲劇の誕生』は
全編がエウリピデス批判に尽くされている
と言っても過言ではない。
悲劇の精神を貶めたとして。
しかし、そのエウリピデスこそが最もディオニュソスの権能を表現した作品『バッカイ』(バッコスの信女)
を遺作として残したわけなのだから、話はややこしい。
そのややこしさの解明にニーチェの主眼が置かれている。

3大悲劇詩人の中では最も人気が高かったらしい。ローマ時代にも盛んに再演されたという。
よって、残っている作品数は最大だ。
1  アルケスティス
2  メデイア
3  ヘラクレスの子供たち
4  ヒッポリュトス
5  アンドロマケ
6  ヘカベ
7  救いを求める女たち
8  ヘラクレス
9  イオン
10 トロイアの女
11 エレクトラ
12 タウリケのイピゲネイア
13 ヘレネ
14 フェニキアの女たち
15 オレステス
16 バッカイ(バッコスの信女)
17 アウリスのイピゲネイア
18 レソス
19 キュクロプス

お勧めは『ヒッポリュトス』『ヘラクレス』『バッカイ』か。
最も有名なのは『メデイア』だろうが、私は好きではない。
何となく催奇性が強調されすぎている感じ。

夫の裏切りの仕返しに我が子を殺す母親、恐るべき女の情念。
・・・・そんなものには、あまり惹かれない。

『ヒッポリュトス』狩りの処女神アルテミスと、性愛の女神アフロディテの対決が、
基調となっている作品。

青年期にはありうる感情。性交にふける愚かしさを笑い、狩りに精を出す王子ヒッポリュトス。
彼は森の中で獲物を追いかけるその最中にアルテミスとの高貴な交情を感じるのだ。
アルテミスもそれをよしとする。笑われたアフロディテは黙ってはいない。
ずたずたに王子の生を引き裂こうとする。

義理の母パイドラが彼に恋をするよう仕向ける。
押し殺すことの出来ない合体への欲望が捕らえて離さない。
乳母が入れ知恵して告白する。その言葉の穢わらしさに、ヒッポリュトスは罵倒を浴びせる。

口外しないと約束したのにと乳母が抗議すると
「舌は誓ったが、心は誓いに縛られてはおらぬ」という名セリフ。
(よく考えると自己チューなヤツ!)

恥ずかしさのあまり、また、怒りの余り、ヒッポリュトスに手込めにされたという解釈にとれる遺書
を残してパイドラは首をくくる。

父王テセウスは遺書を信じ、ヒッポリュトスを追放する。
追放の旅の途中、海から現れた化け物のような荒々しい牡牛に殺される。

瀕死の姿で王宮に戻った彼は、アルテミスからアフロディテの策謀であることを知らされ、
かつ、テセウスに息子との和解を促す。

『ヘラクレス』身震いするほどの傑作だ。
生きる上に優れた友情というものが、どれほどに人を救うのかを示している。
概要は、また、今度。

『バッカイ』ディオニュソス神そのものが、いかに、その教えを広めていったのかを
ダイレクトに、何のトーンダウンもなく、
遺憾なく表現されている。
概要、感想はまた、今後。

テーマ : 書評
ジャンル : 小説・文学

『ちくま文庫 ギリシア悲劇Ⅱ ソフォクレス』

『ちくま文庫 ギリシア悲劇Ⅱ ソフォクレス


ギリシア悲劇といえば「オイディプス王」
というくらい代表選手格の作品を作った人。
偉い。しかし、メジャー嫌いの私は、オイディプス王は余り好きではない。
話が近親相姦で暗すぎるのと、設定・話の筋に一部無理があるのが
見え見えのためである。

犯人探しをすると実は自分だったという意外性と、息子は父を殺し、母と交わりたい
のだという潜在意識の心理学上の発見をもたらしたことも、
よく引き合いに出される理由だろう。
オイディプス王については、私見ではスフィンクスとの対決と、その勝利に、
重点が置かれて、悲劇が作られるべきであるとも考えもする。

スフィンクスの謎は「朝は4本、昼は2本、夜は3本の足の生き物は何?」という
単純はものではなく、
ダクテュロス・ヘクサメトロス(長短短六脚)の韻律による五行の歌で、次のように伝承されている

「一つの声をもち、二ツ足にしてまた四つ足にしてまた三つ足なるものが
地上にいる。地を這い空を飛び海を泳ぐものどものうち
これほど姿・背丈を変えるものはない。
それがもっとも多くの足に支えられて歩くときに、
その肢体の力はもっとも弱く、その速さはもっとも遅い」
(藤沢令夫氏訳)

この問いに対しては、「人間」という回答がサラっと出ますか、貴方は?

オイディプス王にまつわる話はアイスキュロス、エウリピデスともに書いている。
オイディプス王については、ここらでやめておこう。

そしてまた、アイスキュロスと同様だが、顔についても語ろう。よく紹介されている、
ズングリムックリのオッサン顔のあれは信用しないでほしい。

全然タイプの違う、ギョロ目で、クリンクリンの巻き毛の彫刻がある。
そっちの顔をソフォクレスと信じましょう。

ソフォクレスの残されている作品は
1 アイアース
2 トラキスの女たち
3 アンティゴネ
4 エレクトラ
5 オイディプス王
6 ピロクテーテス
7 コロノスのオイディプス

の7作品。お勧めは『アイアース』と『コロノスのオイディプス』か。

『アイアース』は登場人物が素晴らしい。
戦闘の女神アテーネーと彼女がいつも味方する知謀に長けた将のオデュッセウス。

この2人のコンビネーションは、かのホメーロス大先生の最高傑作・世界文学上の至高
『オデュッセイア』ですっかりおなじみですが、
そのコンビが悲劇でも再現されているとなれば、面白くないわけがありません。

トロイア戦争のさなか、ギリシア軍中の第一の将アキレウスの死後、その形見の武具が
だれに与えられるべきかの判定は、オデュッセウスかアイアースかどちらかということになった。
アイアースは敗れ、オデュッセウスの手に。

この判定に敗れたことを怒ったアイアースはギリシア軍の総指揮者たるアガメムノン、
その弟メネラオス、宿敵オデュッセウスを襲って殺そうとしたが、女神アテーネーにより、
幻惑され、牛羊の家畜の群のめった打ちにしたのであった。

劇は冒頭、不穏なうごめきを察知して血糊のついた足跡をたどってきたオデュッセウスに、
アテーナーが呼びかけることからはじまる。

女神から事実を知らされ、悟ったオデュッセウスに、狂乱のアイアースの姿を見せようとする。
ソフォクレスの作品中、1・2番目に写本が多いものらしい。
この冒頭のシチュエーションの妙味が劇的効果が高いためか。

後半は、愛人テクメッサから死を思い留まれと説得されて一端は了承したアイアースが、
結局は自死してしまい、その亡骸の埋葬をめぐっての話となる。

禁止を宣言するアガメムノン・メネラオスに対して、死者への儀礼を尽くすべきと説得する
オデュッセウスの高邁さがひかる。

自分の力を過信するあまり、神々に対し尊大な態度に出る、その思い上がり(ヒュプリス)
が恐るべき墓穴を掘る結果となるという定型のパターンがアイアースに下されるのが根底にある。



『コロノスのオイディプス』
父を殺し、母と交わって子を4人も設けたことを、自らが追求して、明らかにした賢王オイディプス。
その判明の瞬間、自らの目を抉り抜く。

そして、自分を祖国から追放せよと宣言し、放浪をはじめる。
娘アンティゴネが付き添う。諸国流浪の末、アテナイ近郊のコロノスの神域の森に到着する。

アテナイ出身の英雄テセウスが、彼を運命・神々との和解へとの導きを行う。
極めて宗教的救済がテーマとなっている作品である。


『ピロクテーテス』も正義の問題を扱っていて、ユニークだ。解説はまた、今度。

テーマ : 書評
ジャンル : 小説・文学

ちくま文庫『ギリシア悲劇Ⅰ アイスキュロス』

ちくま文庫『ギリシア悲劇Ⅰ
アイスキュロス
偉い人である。

三大ギリシア悲劇詩人の中では一番ハンサムで、
背が高く、貴族であり、
作品の高邁さでも異質な輝きを持っている。
ペルシア戦争参加でヘロドトスの『歴史』にも登場している。
(その時、兄が目前だったかで戦死した)

有名なアイスキュロス像で、丸禿のヒゲの長い顔として紹介されているが、
このイメージでとらえてはいけない。
イタリアの美術館に全身像のアイスキュロスの彫刻があって、
イメージは肩幅といい、まっすぐ見据えた視線といい、全き「完全人」
という感じで本当の貴族というものを感じさせる。

(某図書館にあったのを発見して驚いたものだが、
18年後のその図書館にいったら、見あたらなかった。見つかり次第アップします)

親の遺産でボンクラな生活を送る、
そのような現代の貴族とは隔絶している極みの男。

残っている作品は

1 縛られたプロメテウス
2 ペルシア人
3 オレステイア3部作  アガメムノン
4 オレステイア3部作  供養する女たち
5 オレステイア3部作  慈しみの女神たち
6 テーバイ攻めの七将
7 救いを求める女たち

の7作品で、
古代において通常上演される3部作が
セットになって残っているのは、このアイスキュロスだけである。

エッセンス的に知りたいのなら1と3~5を読むとよいのでは。

****************************
以下、好みに任せた、美味しいところ録りの悲劇紹介をいたします。
(学術的な評価、歴史的背景、文学的価値とかムズカシ~イお話は
大学の先生や、その道のご専門のHPにあたってください)

『縛られたプロメテウス』は現代に伝わる、残っているギリシア悲劇
全作品中でもかなり異質な作品である。
人間と神様が混ざってか、人間のみが演じられるのだが、これだけは
ほとんどオール神様キャストなのである。
だから、相当な大昔という時代設定で昔もむかし、ゼウスがその父クロノス
の覇権を倒してそれほどたっていない時期という設定。
そして、全権を握る新規の覇者ゼウスの諸悪を、巌(いわお)に磔られた
プロメテウスが告発するのである。

かつては、クロノスを倒すのに決定的な助力を与えたのにもかかわらず、
人間に様々な技術を与えたという理由で磔られたわけであるが、
これに3者が順に訪れて問答を交わす。

世界をめぐる大河・大洋の主オケアノス (プロメテウスの戦友)
ゼウスの好色の対象 人間の娘イオ (非道の目にあわされる同じ立場)
ゼウスの息子神 ヘルメス (伝令役)
の三者。

圧巻というか全体が緊張の連続なのだが、
イオが登場するくだりは素晴らしい。
イナコス王の娘。ゼウスの愛を受け、そのためゼウスの妃ヘラの嫉妬
から逃れるようとゼウスが彼女を牝牛に変じた。
ヘラは牝牛を追い立てるのに千の目を持つ化け物アルゴスを使わす、
アルゴスはヘルメスにより滅ぼされる。
神話の解説書などではここで一端話は終わるが、アイスキュロスは、
アルゴスは死んでもなお亡霊となり、追い立てる筋立てとした。
美貌のうら若き女性が牝牛の2本の立派な角をはやされ、虻につつかれ、
化け物の亡霊に追い回される。
それもまた、新規の独裁者、神々の神たるゼウスの仕業というわけである。

最後近くのプロメテウスのセリフ
「だから、私に向かって投げつけさせろよ、両刃の焔の稲妻なりを。
また高空を雷鳴の轟きや、荒れ狂う嵐の痙攣で掻き乱すがいい。
して大地を根底から、根ぐるみ強風にゆるがせ立てろ、
また、海原の波は逆巻く怒濤と吹き上げさせ、
天上の星の通い路を洗わせたがいい。
して暗黒のタルタロスへと真逆さまに私の五体を、投げ下ろさせろ、
必然の仮借を知らぬ渦のさなかに。
しかもなお私を、死なせることはできなかろう」
(呉 茂一 先生 訳)

あなたも、私も、アイスキュロスも、ホームレスも、
アメリカ合衆国大統領も、『必然の仮借を知らぬ渦』の中に
投げ下ろされているわけですね。

****************************

「ペルシア人」
紀元前472年上演、サラミス海戦から8年後。
大戦争のペルシア戦争勝利からさめやらぬ状況のアテーナイ市民に、
ペルシア帝国王宮内の狼狽ぶりをこれでもかとさらけ出す内容。いか
にギリシア側アテーナイ側が、策謀、知恵、勇気をふるったのかを、
当時、市井でいやというほど語られたであろう。
それを逆の手で、表現し、持ち上げることを作者はやった。
敵の狼狽ぶりを第3者として鑑賞する地位に市民をつけさせるという作
劇上、政治手腕上のテクニック。ニクいね~。

登場人物:
若きクセルクセス王
先王ダレイオスの亡霊
ダレイオスの后にしてクセルクセスの母のアトッサ
ペルシア人の長老たちよりなる合唱隊コロス
伝令

アトッサがダレイオスの霊を呼ぶ時のアイテム
・お供え水
・けがれなき牝牛の白い甘い乳
・花のしずくを集めたるすき輝ける蜂の密
・乙女の泉の水の滴り
・野辺の母なるぶどうの古木のまじりなき琥珀の露
・時を分かたず繁る葉にいのち花咲くきみどりの、
オリーブの木からの香しき実
・万物の母の大地の子なる花冠
これらを供えて大地に飲んで頂いて、地下の神々様に送りとどけるという。
そして、招魂の御聖歌を唱えると「先王の霊」が、果たして、現れた!

ところで、貴方は霊なるものを見たことがありますか?
私は一度だけあります。

**************************
「オレステイア 三部作」

私の手に負えないところの壮大さ。
だから、断片的にしか、扱えない。
つまるところ、「親子って何?」
親が子を殺す、その復讐に妻が夫を殺す、その復讐に子が母を殺す。
ギリシア古代最大の王家の不幸。
それは、神の仕業ではない。
個々の人間の、己の妄執にとらわれた結果。
救いをもたらすは、裁判による調停(調定)。
裁判官の代表は戦争の女神。
偉大な性格の人物たちは鎮魂の霊と化して、民族から手厚く敬われる。

印象に残っているところ、

「アガメムノン」
・冒頭部の物見(ものみ)の男の独白
=素晴らしく効果的であり、アイスキュロスっぽさが
よく現れている。(長い台詞が兎に角私は好き。)

・コロス
「悩みによって学ぶことこそ、
 この世の掟と定め給うて
 人間を思い慮りに導いた御神なれば。
 されば眠りに代えて心の前に、疼く痛みを
 忘れもやらぬ 悩みこそ、血をしたたらせ、
 望まぬとてもおのずから、慮りをもたらすもの。
 たぶんは尊い舵をお取りの神の、
 力ずくでの情けであろうか」(呉 茂一 氏訳。以下同様)

・クリュタイメストラ
「倒れた者をなおさら蹴りつけようというのは、
 人の生まれつきでございますから」

「海がある・・・その海を誰が干しつくせよう・・・その奥にはいっぱい、
 あの黄金にも等しく尊い紫貝を養い貯めている、ぞくぞくと噴き出す
 真紅の液の、あの着る衣を染めなす色」

・カサンドラとコロスの掛け合い1071~1330
カサンドラ「おとととい、ぽぽい、だあ。おお、アポロン、おお、アポロン」
コロスの長「なぜそう悲しげに呼びかけるのか、ロクシアス神に対して。
       死者を悼む嘆きの歌で迎えられるに、その御神はふさわぬだろうが」

・・・・・・どうも、美女をいためつけるシナリオはアイスキュロスさんが一番のようだ。

その美女も<儚げ、無垢、純粋、運命への殉死>のイメージをかぶせられて。
あぶねー、あぶねー。神懸かりともいうべき放心状態で、痛切な見通しを告白
させられる女たち。


テーマ : 書評
ジャンル : 小説・文学

ホメーロス『イーリアス』

ホメーロス『イーリアス』
呉 茂一 先生 訳

唯一神ではなく、
神々と人間が
己が名誉と責任をかけて
戦う世界

なんぞや!?
無慈悲な戦慄の世界
これぞ、『人間=戦争機械』のテーゼ全面!!

これを直視して「美」と感ぜられるか!

トロイア戦争にやむなく従軍させられた
一兵卒のテルシーテースが
奴隷とした敵の娘たちをとりあって
もめている大将アガメムノーンの愚劣さを告発するのだが、
それを打擲するオデュッセウスの非情・過酷・峻烈ぶりが
周囲の兵士たちから褒め称えられる

戦争がはじまれば、大義の虚偽に、すべてがねじ伏せられる

サバイバルするための、みなぎる力を私に与える書である




テーマ : 書評
ジャンル : 小説・文学

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